ICL手術を受けてきた話

僕は目が悪い。視力を両目あわせても0.01くらいには目が悪い。メガネをかけることで特に問題なく暮らせていたから不便ではないが、メガネなしに暮らせるならそれに越したことはないと思っている。視力が低いことは程度の低い障害だ、くらいにまで思っている。

 

レーシック手術を受けることも考えたが、レーシックは手術後に視力が低下する可能性があるみたいなことも聞いたし、いまひとつ踏み切れないでいた。そのときICLという手術では視力の低下がレーシックよりも起こりにくいと聞いた。このときボーナスの使い道を考えていたこともあって、僕はこれを受けることにした。

 

ICLとは日本語で眼内コンタクトレンズという。なんか網膜の中にレンズを入れることで視力を回復するみたいなことらしい。詳しくは各々調べてほしい。以下には当日の体験記を記そうと思う。

 

受付〜検査

受付で既往歴などのアンケートに記入する。その後、機械を使っていろいろな眼の検査をする。眼科検診に行ったことがある人はわかると思うが、眼圧検査(風がプシュッと出てくるアレ)とか、気球の写真を眺めるアレとかの見たことあるやつから、よくわからん機械までいろいろあった。個人的にはサイバー感のある輪の中を見続ける検査が一番面白かった。

これらの検査を終えてから視力検査に入る。よくあるランドルト環(C字型のアレ)などを用いたものだ。いつも通り全然わかんね〜となっていた。こういうのっていずれ正答率教えてくれないのかな。

 

点眼

視力検査を終えてから、瞳孔を開く目薬を点眼された。これがなかなか面白くて、近くに持ってきた本やスマホの字がめちゃめちゃ見えにくくなる。メガネをかけているのにメガネをかけていないような感覚。僕はいつも胸元で本を手に取り読んでいるが、このときは膝のあたりまで話さないと字がはっきりと見えなかった。ウケる。しばらく経ってからまた気球を見る検査をした。恐らくあれは瞳孔の開き具合を見るやつなんだろう。

 

診察

これを受けるまでに1時間かかった。人気のクリニックに行ったから仕方ないと思うが、瞳孔が開いているせいで本もうまく読めないのですごく退屈だった。ルービックキューブでも持っていけば良かったかもしれない。それかイヤホンで音楽聴くとか。診察室では眼科特有の目をライトで照らしてお医者さんが色々見るやつをやった。どうやら僕の角膜の厚さとかは手術条件に適合したらしく、手術は受けられるようだった。その後手術に関する説明を受け、今後の流れを説明されその日は終了。手術は近くても一ヶ月後になるということだった。有給を消費することが決まった。

 

採血

手術を受けるにあたって執刀医へのリスクを考え、HIV検査のため採血をされた。僕は手術とかを受けたことがなかったのでこういうことがあるのは知らなかった。

この日は受付が13:30だったのでもう腹ペコだ。これが一番つらかった。池袋の洋包丁という定食屋でスタミナ焼き定食にありつく頃には時刻は19:00を指していた。

 

翌日

二度目の視力検査だ。初日に行った視力検査の結果が正しいかどうかの確認みたいなものらしい。

今回はランドルト環を使ったいわゆる普通の視力検査だ。時間は大してかからなかったが、この日もはちゃめちゃに混んでたため1時間以上はかかった気がする。

 

翌月

いざ手術!!!

 

 

と思わせてまた検査だ。これも同じく視力検査。やっぱりレンズを眼の中に入れるという手術の特性上、視力は厳密に測らなくてはいけないのだろう。これは経験にもとづく曖昧な知識だが、視力検査の結果はその日の体調とかで若干前後する。あくまでも体感だが、それでも眼下で測った視力とメガネ屋で測った視力で差があった、なんて経験をしているのであんまり間違ってないと思う。それだけに複数回検査して、正確に今の視力を測定する必要があるのだろう。

特に問題もなかったため、2週間後には手術を受けられるとのことだった。正直少しワクワクした。

 

手術3日前

眼の消毒のためだったか、手術の3日前から目薬を使い始めた。2種類渡され、片方を点眼してから3分ほど間隔を開けてもう一つを点眼、いずれも一回あたり2滴の点眼、それを一日目6セット行うというまあなんとも頭が痛くなるような内容だった。

朝起きて点眼し、朝食後にまた点眼、昼にまた点眼…と気づいたらまた目薬、といった具合だった。人生で最も目薬をさした3日間だったと思う。

 

手術当日

いざ当日。来院してからもう一度眼圧検査みたいなのをやった。今回はこれに加え血圧も測った。手術になにか関係あるのだろうか。ちなみに上が124で下が74だった。自分史上の最高値だったのが印象的だった。緊張か?

その後は瞳孔を開くための目薬を間隔を開けつつ何度かさした。しばらくすると文字を読むのが難しくなり、退屈になった。先日の反省を活かしイヤホンを持ってきていてよかった。適当に音楽を聞きながら手術までの時間を潰す。

 

しばらくして手術後のことについて説明を受けた。手術後は目薬の頻度が更に増えるらしい。マジかよ。これまでは1日6回だったのが1日8回になるらしい。もはや楽しいまであるな。加えて抗生物質などの飲み薬ももらった。血圧を下げる薬を使っていると困ることがあったらしく、血圧を測ったのはこの飲み薬のためのようだ。薬に加えて、手術後に眼を保護するためのメガネと寝てるときにする眼帯をもらった。メガネは花粉をブロックしてくれそうな形状のもので、時期的にしばらく使おうかとも思ったりした(これはネタバレだが結局使わなかった。メルカリに出品したら一瞬で購入された)。

 

待ち時間の間に手術着を着せられた。頭にネットみたいなやつを被って、かっぽう着みたいなやつを着せられた。いよいよ手術が近いのだと思わされる。少しだけ緊張した。

 

しかし待ち時間が長い。予定より1時間半遅く手術室に案内された。手術中にトイレに行きたくならないように昼食を取っていないからすごくお腹も空いていた。本を読んだりもできないし、ひょっとしたら手術そのものよりも待ち時間のほうがつらいのではないか。まあ一番大変なのは執刀医の方なのだが。

 

手術町の間に瞳孔を開く目薬を何度か打ったのだが、手術前にはそれとは別の目薬を打つことになった。麻酔用の目薬らしい。目の手術というものにビビっていた僕はてっきり眼球に直接麻酔薬を注射するものだと思っていたから、何滴か目薬を注射するだけで済んだのでとても安心した。この手術をするにあたって、笑気麻酔(痛みを和らげるための麻酔というよりも、気分をリラックスさせるための麻酔。脱毛の施術のときに使うクリニックもあるらしい)を使うこともできたのだが、1万円以上したので僕は使わない選択をした。その代わりといっては何だが、手術中にニギニギするためのゴムボールを渡された。献血に行った人ならわかると思うのだが、採血中に握っているためのアレみたいな感触だ。今思うと少し心もとない気もするが、手術前にその存在を知った時には存外頼もしく見えた。

 

手術室に案内される。手術室には椅子と何かいろいろあった。正直メガネをしていなかったので中に何があったのかはわからない。椅子に座らされると、歯医者よろしく椅子が倒された。当然顔の真上に照明がついているのだが、目薬の影響で瞳孔がガン開きなのもあってめちゃめちゃ眩しかった。これに最後まで苦しめられることになる。

 

手術開始

ます顔の消毒から始まった。顔を傾けつつ赤い消毒液を目にバシャバシャかけられたり、床屋のヒゲ剃りの時に塗るクリームみたいなやつを塗られた。片目だけ穴の開いたシートみたいなものを顔に貼られ、いよいよ手術が始まった。目を開けたままで固定する器具を付けられた感覚があった。これを付けられて以降、目の潤いを保つために定期的にバシャバシャと水をかけられることになる。結果的に視界は水のバシャバシャと、照明の強烈な明るさでなんだかよくわからない状態だった。ストレスが非常に高い環境だったことは覚えている。人間に例えるなら、ものすごい剣幕でまくしたててくるクレーマーのようだった。

 

手術中の目の感覚としては、目がぐいぐい押されているような感じだった。麻酔のおかげで痛くはなかったのだが、不快感はまあまあ感じた。目がジーンとするような感覚と、ときどきグイっと押されるような感覚の中で、ずっと正面(天井)を見るように指示された。これが存外に難しく、シンプルに照明を直視するだけでなく瞳孔がしっかり開いている状態のため、無意識に目をそらしてしまうことがままあった。執刀医には怒られた。

 

手術自体は大した時間はかからなかったように思えたが、ストレスはたまったのでそこそこ疲れた。手術がおわったら少し目を開けて休憩スペースまで移動したのだが、その時の視界はなぜか赤らんでいた。これは恐らく目が血まみれだったのではなく、消毒液が赤い色をしていたのが原因だと思う。アニメのバトルシーンなんかで主人公の目に血が流れてきたときに視界が赤く染まる演出は割とマジであるのかもしれないと思った。視界は赤いフィルターのほかに白いもやがあり、まだくっきりとは見えなかった。

 

手術室外のやわらかい椅子に案内され、目をつむっているように指示された。だいたい90分ほど目をつむったままお待ちくださいと言われたときは面食らったが、疲れていたのでちょうどよかったかもしれない。

椅子に座ってすぐ、看護師さんから痛み止めの薬を渡された。水は紙コップで渡されたのだが、のどが渇いていたのですぐ飲み干してしまった。もう少し飲みたいと思っていたら看護師さんが「左手のそばにお水置いておきますね」と言ってくれた。看護師さんのやさしさに感謝しつつ暗闇の中手探りしてみると、どうやらそれらしきものが見つからない。無理やり探してコップを倒してしまうのも怖かったので、探すのをあきらめた。1時間ほど喉カラカラで過ごす決意を決めた。ちなみに水はペットボトルで渡されていた。えるしっているか めをとじていては ぺっとぼとるだとわからない

 

1時間ほど目をつむって待っていると、名前を呼ばれた。どうやら目を開けていいらしかったので目を開けると、まぶしさと目の異物感でうまく目を開けられなかった。どうやら麻酔も若干残っていたようで、右目がうまく開かなかった。視界は寝起きみたいにぼんやりした感覚だったが、歩く分には問題ない感じではあった。呼ばれた理由は術後検査のためらしく、眼圧検査などをする機械の前に案内された。目を開けるのが少し難しかったことと、目の異物感があったため目に風が来るのがちょっときつかったため、眼圧検査は何回かやり直した。普段の眼圧検査でも何度かやり直す人なので、これはしょうがなかったかもしれない。

 

この検査が終わった後、特に問題がないということで帰ることとなった。できれば電車などでは目をつむっているように忠告を受け、目を保護するための保護グラスをかけてから帰った。目の異物感(感覚としてはコンタクトレンズを入れるのに失敗したような感覚)が強かったので、瞬きの回数がすごかったと思う。これは帰ってから気が付いたが、充血もすごかったので周りから見たらちょっと怖かったかもしれない。真っ赤に充血した成人男性がうつむきつつ瞬きしまくって歩いていたら僕はちょっと避ける。

帰りの電車では乗換に苦労したくなかったので、手術前に簡単なルートを検索しておいた。目をしっかり開けて順路を探すのがおっくうになるので、この手術を受ける人は帰り道をしっかり覚えておくことをオススメする。

 

帰ってきてから、僕はもう狂ったようにキッチンを右往左往した。最後の食事からおよそ10時間、とっくに空腹の限界値に来ていた。冷蔵庫から豆腐を取り出し、冷凍チャーハンを一袋まるっと温めた。疲れの原因は恐らく手術というよりも、空腹だったのかもしれない。とにかくドカ食いした記憶だけ残っている。ちなみにその後おなかを下した。みんなは理性的な食事をしてほしい。

 

閑話休題。帰ってからの目の調子だが、特に痛みはなかった。相変わらず異物感は強かったので目をしっかり開けていたくはなかったが、徐々に視界のぼやけが消えていくのはうれしかった。

帰ってから目薬を何度か打つ必要があったのだが、目薬を打つために保護グラスを外した時が衝撃だった。眼鏡を外しても視界がクリアなのだ。むしろ目の前に何もなくなったことでよりきれいに見えるのが不思議でならなかった。眼鏡をして10年以上過ごしてきた僕にとってこれは衝撃で、ありていに言って感動してしまった。手術をしてよかったと最初に思ったときは、このときだったかもしれない。

 

寝るときには保護グラスではなく、丸いプラスチックの板をシールで張り付ける必要があった。寝ぼけて目をこすってしまわないようにするためだろう。眼科の受付でシールとプラスチックの板をもらっていたので試しにつけてみたが、粘着力が貧弱で全く接着できなかった。面倒だったが近所のスーパーがまだ開いていたので、強力なものを買ってきた。これで無事完全に接着できたものの、食事の時間がおかしかったせいか体内時計が狂い、なかなか寝れなかった。

 

翌日

目が覚めた時、目の異物感が少し和らいでいるように感じた。この日は術後翌日検診があり、また眼科へ行く必要があった。視力検査や眼圧の測定などをしたあと、目の写真を撮った。大して問題はなかったが、目の表面に傷が何か所かできてしまったらしい。これはままあることらしく、新しく目薬を処方することで対処できるらしい。ちょっとだけ面倒が増えたが、それ以外は経過良好とのことだったので安心した。この日はその健診だけしてすぐに帰った。

 

家に帰って目薬をしていると、目薬の頻度に驚いた。まず、術後1週間は1日8回も目薬を打たなければならない。しかも、処方されている目薬は4種類もある。おまけに片目に2滴しないといけない。どういうことかというと、1日当たり128滴だ。128滴だ。おそらくこの1週間だけで、10年分くらいの目薬を打ったと思う。気が狂うかと思った。スマホのタイマーで時間の管理をしていないとすぐ目薬を打つ時間が来てしまうので、この1週間は結構大変だった。

 

術後2日目

もう仕事をしても良いといわれていたので、この日は有休を取らなかった。目の異物感は若干あったが、視界はクリアになっていたので仕事はできた。集中力は少し落ちたが、これは2日間の休み明けだったからかもしれない。少し逸れるが、仕事中に何度も目薬を打たなくてはいけなかったので、テレワークじゃなかったら何かしら突っ込まれていたと思う。

 

術後3日目

この日も健診に行った。翌日検診と大差なかった。乗換案内を見ずに眼科に行けるようになった。

 

術後1週間

術後1週間検診に行った。医師に目の状態を見てもらい、問題がないことを確認してもらった。翌日検診でできていた目の傷は無事に治っていたらしく、もう保護グラスをつけずに生活して良いと言われた。加えてシャワーや洗顔をしても問題がないと言われたのが何よりも最高だった。まだ冬とはいえ、濡れタオルで髪を拭くだけの生活は正直きつかった。家に帰ったとき、手術が一区切りついたんだなと実感した。

 

それから

目薬の回数は一日4回に減った。あとこれまで4種類やっていたのが3種類に減った。回数が減ったとはいえ4回も打つ必要があるため、1種類減ってくれるのはうれしい。目の調子については、以前よりも若干ドライアイ気味になった気がするというくらいで特に問題はない(たしかこのドライアイもそのうち消える)。強いて言うなら、夜になるとハロー・グレア現象(光がまばゆく見える感じ)をたまに感じるくらいか。いずれにせよ目が良くなったことによるメリットの方が自分の中では大きいので、手術を受けることができて良かった、と強く思っている。

 

長々と書いてしまったが、僕が受けたICL手術の感想はこんな感じだ。受けてみたいと思った人は僕にぜひ連絡してほしい。3万円分の割引クーポンを持っているので。最初に眼科に行って検査をしてから、手術まで1ヶ月半ほどかかったが、無事に終わって実に感無量だ。

末筆になるが、いくつか手術後に驚いたことをまとめて締めようと思う。

 

手術後に驚いたこと

・汗を拭きやすい

・目薬をするときにメガネを外す手間がない

・顔を洗ったあとの自分の顔がはっきり見える

・ヒゲそりをするときに鏡に近づく必要がない

・メガネをしていないと久しぶりに会う人に気が付かれない

・メガネをクイッとやる動きをしてしまう

・なんだか落ち着かないのでブルーライトカットのメガネを買ってしまう